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「サクソフォンといったらフランス」…これが世界共通の認識である。アドルフ・サックスという19世紀半ばのベルギー人楽器職人によって発明されたサクソフォーンは、管楽器大国フランスにおいてそのオリジナリティを確立してきた。巷で演奏される曲のほとんどがフランス物であること、活躍するほとんどの奏者のルーツがマルセル・ミュール(1901 - 2001)にあることなどから、背景に広がる巨大なフランスの勢力が浮かび上がってくるのが判るだろう。
しかし1980年以降、廉価な音楽メディアであるCDの登場や、ミュールの忠実な後継者ダニエル・デファイエ(1922 - 2002)の演奏活動引退などによって、世界で活躍する奏者たちが世界中に知れ渡る可能性が出てきた。伝統を継承しつつ新たなフレンチ・サクソフォンの未来を開拓するパリ音楽院教授クロード・ドゥラングル、オーレリア四重奏団でも有名なアムステルダム音楽院教授アルノ・ボーンカンプ、日本でのクラシカルサクソフォーン認知度を一気に高めた須川展也などなど…。現在世界中のサクソフォン奏者が、百花繚乱とも言うべき活動を展開しているのは周知のとおり。
そんな中、あまり日本に知られていないのがイギリスのサクソフォン。ジョン・ハールを始めとした多くのヴィルトゥオーゾを擁し、ほかの国に見られないオリジナリティ溢れる活動を繰り広げている。このページでは、そんなイギリスのサクソフォン奏者を中心に、録音、レパートリー、またその作曲家について解説していく。
・イギリス・サクソフォン界の歴史 The History of the Saxophone in U.K.
・プレイヤー:ジョン・ハール John Harle
・プレイヤー:サイモン・ハラーム Simon Haram
・そのほかのプレイヤー Saxophonists in U.K.
・イギリスの四重奏団 Saxophone Quartet in U.K.
・主要レパートリー Main Repertory and Performances
・作品リスト(工事中)
最初は、ディスクユニオンで手に取った二枚の中古CDだった。イギリスの奏者&作曲家のコラボレーションCDで、アポロ四重奏団の「First & Foremost」とジョン・ハールの「Saxophone Concertos(Argo)」、たしか両方とも\1,200程度だっただろうか。今にして思えばこんな貴重なCDを偶然入手できるとは、ずいぶん稀な出来事だったと思うが…。
そのCDを家に帰って聴いたときの体験は今でも忘れることができない。それまでフランスの正統派作品&演奏しか知らなかった自分にとっては、作品のかっこよさと演奏の鮮烈さに目から鱗が落ちたものだ。「トニーへの歌」のミニマル風メロディの中に激しく渦巻く狂気や悲哀、「蜜蜂が踊る場所」「ビーン・ロウズ・アンド・ブルース・ショッツ」で見せ付けられる超絶のテクニック、それがスピーカーを通してダイレクトに伝わってくる…これほどまでにアイデンティティを湛えた作品、演奏を、それまでに聴いたことがあっただろうか!
それからは機会あるごとにイギリスのサクソフォン音盤を集めた。クラシカル・サクソフォンのCDはそのマーケティング上での認知度の低さから、一度廃盤になると復刻はまず望めない。店頭やオンラインショップ、中古ショップを覗いては、イギリスの演奏者のディスクを探したものだ。特にArgoレーベルから出版されている一連の貴重な録音は廃盤になっているものが多く、何度も入手を試みたすえ届いたのは見本盤(普通に聴けるが)だった、ということもあった。
そんなこんなで手元にあるイギリスのサクソフォン関連のCDが現在約15枚。ほんの4年前からサクソフォンに興味を持ち出し、イギリスのサクソフォンCDを集め始めたのはせいぜいここ1年半。入手困難なCDが多く収集は難航したが、ようやくWeb上で公開できるだけの録音資料が集まったと判断しページを作成、公開するに至った。拙文だらけのページになってしまったが、ここを見てイギリスのサクソフォン音楽に少しでも興味を持ってくれる方がいれば幸いである。2006/01/16記